法話(オンライン法話のテキスト版です)
令和6年 9月 法話
法話1
猛暑の夏を乗り越えて、秋のお彼岸の季節となりました。
少し落ち着いた心持ちで仏縁を見つめる時期であります。
今から15年程前の事です。当時の光源寺婦人会会長さんが施設へ入居され、そのお見舞いに伺ったときの事でした。
「若院さん。私はここが終の棲家と思っております。ありがたいことに清潔感がある個室を準備いただきました。窓はちょうど長崎方面を向いており、直接目にすることはかないませんが、常に光源寺の本堂へお参りしている心持で窓へ向かって合掌しています。
そういう日々を送っている中で、フッとお寺でお聴聞した言葉が思い出されました。それは『カゲというのはありがたいね』というワンフレーズでした。
実は、個室というものは、初めは気楽でいいと思っていましたが、誰も訪ねてくれるものがありません。家族も滅多に顔を見せにきてくれません。一日に数度、施設のスタッフの方が様子を見にきてくださいますが、その他はこの部屋の中でずーと一人で過ごしています。
1人で過ごすという事がこんなに寂しいものだとは思いませんでした。そんな時に『カゲというのはありがたいね』という言葉が私の胸に響いてきたのです。カゲというのは私の足元から伸びるあのカゲですよ。このカゲは私が歩けば一緒に歩いてくれるし、私が座れば一緒に座ってくれる。電気を消せば見えなくなりますが、点灯した瞬間から私の足元にいます。なるほど、私は一人じゃなかった。私にはこのカゲがいつも一緒にいてくださった。昔の方がこのカゲに最高の敬意を表して『おかげさま』という言葉を大切にされたことを今になってようやくありがたくいただくことができました。
カゲというのは、私の足元から決して離れることがありません。目には真っ黒にしか見えませんが、実は、これまで私を支えてくださった多くのオイノチさまのお働きの事だといただいております。私は自分でも気が付かないほど多くのオイノチさまのお働きと共に、今日ここに生かさせていただいていたのだと気づかせていただきました。」
と、婦人会会長さんがお話くださいました。
阿弥陀如来さまのお慈悲は、ある時は父の姿を通して、ある時は母の姿を通して、あるときは、友人、そしてスタッフの方を通して「この私一人を救わずにはおれん。我をたのめ、必ず救う」と働き続けてくださっています。この私は、測り知れない多くのおかげさまの中で生かさせていただいておりました。そのお慈悲のお誓いをおかげさま・南無阿弥陀仏といただいて日々を送って参りましょう。
合掌
法話2
皆さんおはようございます。シアトル別院の楠活也です。よろしくお願い致します。
皆さんは、算数はお好きでしょうか?
私の息子がですね、小学校に通い始めて、学校で算数を習ってきてですね、よく、「お父さん問題出して。」何ていうことを言う、そういう会話をする事があります。
小学校の時はいろんな算数を使ってですね、いろんな話をするんですけれども、例えば「1+1は?」と言われたら「2」と答えるんですけど、「いや、違うよ。ブー、1+1は、それを組み合わせて田んぼの田です。」なんて言うような、ちょっと、とんちの効いたような計算をしていた、小学校の時にはですねしていた事もよく覚えております。
私は今、アメリカのシアトル別院という所でですね、お坊さんさせて頂いているんですけれども、こういう算数、足し算を使ってですね、仏教をお伝えする事もあります。
英語ですよ。英語でですけれども、例えばですね、こういう事です。
「I+I=LOG」。算数があるんですけれども、皆さんこれ分かります?
この「I(アイ)」、何の「I(アイ)」を示してるか。「LOG」とは何の事なのか、ちょっと一つ一つ見て行きたいと思うんですけれども、まず、ひとつめの「I(アイ)」はですね、諸行無常、仏教の教えの諸行無常の「I(アイ)」の事なんですね。「Impermanent(インパーマネント)」と英語では言います。全てのものは移ろい変わっていくものですよという事ですね、他にも「Constantly changing(コンスタントリー チェインジング)」「Everything is constantly changing(エヴリシング イズ コンスタントリー チェインジング)」次から次に変わっていってるんですよ、そういう教えがありますよ、仏教の教えですよっていうのが、まず、ひとつめの「I(アイ)」ですね。
そして、ふたつめの「I(アイ)」はですね、今度は諸法無我を表す「Interdependent(インターディペンデント)」。
「Interdependent(インターディペンデント)」というのは、諸法無我っていうのは、我は無いいうふうにね、日本語で書かれているんですけれども、これを英語に訳していくとですね、単独で存在するものではない。なので、みんな支え合いながら、関わり合いながら生きてるんですよっていうことから、お互いに支え合っているんですよ、繋がりあっているんですよっていう事で「Interdependent(インターディペンデント)」いう単語が使われます。他にも「Interconnected(インターコネクディッド)」とかね、そういう言葉を使われる事がありますけれども、「Interdependent(インターディペンデント)」の「I(アイ)」、これがふたつめの「I(アイ)」ですね。
このふたつを合わせると「LOG」というふうになるわけですけれども、諸法無我、諸行無常いうそういう教えを頂いて、そういう見方で、この命この世界を見させて頂くと、「LOG」というのはですね「Life of Gratitude(ライフ オブ グラティテュード)」、「報恩感謝」。命に感謝しながら生かさせて頂くんですよ。「I+I=LOG」いうのは、諸行無常、諸法無我の教えを頂いて、そういう目をもって、この「I(アイ)」というのは、目っていうのもね係ってるんですけれども、そういう目を、諸行無常、諸法無我の教えを頂いて、それを基に生かさせて頂くとですね、報恩感謝の日々を過ごさせて頂けるんですよっていう事から、「Life of Gratitude(ライフ オブ グラティテュード)」というふうにですね、よく伝えることがあります。
これは仏教の教えをですね、本当に「I+I=LOG」という短い算数の式にしてですね、表して下さったものなんですけれども、簡単な事のようでなかなかできない。やはり諸行無常と知りながらですね、常なるものをあまり変わることを厭う、嫌だなと思う自分もいます。
諸法無我と知りながら、自分、自分、自分ばっかり自己中心的になっていってしまっている自分がいます。そうではなくて、仏教っていうのは「Impermanent(インパーマネント)」「Interdependent(インターディペンデント)」。そういう目をもって、この命をしっかり見てくださいよ、そのそういう生き方をすることで、「Life of Gratitude(ライフ オブ グラティテュード)」、「報恩感謝」の日々を過ごさせて頂けるんですよという事をですね、教えて下さっております。
皆さんもですね、この「I+I=LOG」というのですね心に留めながらですね、自分を振り返りながら日々を過ごしてみてください。本日どうも有難うございました。