法話

法話(オンライン法話のテキスト版です)

令和8年 4月 法話

2026-04-01
6月日本語法話 浄土真宗と結婚 
ある時、シアトル別院の高校生くらいの若い子たちを連れて、シアトル別院の向かいにある真言宗シアトル高野山を訪ねました。座禅に参加させてもらったり、真言宗のことを教えていただいたりと、貴重な体験をさせていただきました。彼らにとっても私にとっても、違う宗派に触れることで、より浄土真宗の理解が深まりました。シアトル高野山の太定先生が、次のような質問をしました。「浄土真宗と他の宗派との決定的な違いは何ですか?」高校生のみんなも「浄土真宗は、Gratitude(感謝)を大切にする。」「浄土真宗は、そのままありのままの受け止めてくれる教えだ。」と一生懸命答えていました。ただそれらの答えは他宗派の教えにも含まれているところがあり、決定的な違いではありません。私も、なにがあるかなと考えていたのですが、太定先生の答えは次のようなものでした。「浄土真宗は、宗祖親鸞聖人が結婚し、家庭を持たれた。そのような宗派は他にはありません。本来、仏教では、僧侶が結婚したり、家族を持ったりすることは戒律で禁止されています。親鸞聖人は、それを承知の上で結婚された。私から見たら、仏教界の大革命者です。」
現在の日本の仏教の現状を見てみると、どの宗派に関わらず、多くの僧侶が結婚し、家庭を持っています。しかし、浄土真宗以外の宗派の僧侶が結婚するようになったのは、明治になって、日本国の憲法ができてからだそうです。アメリカでは、スリランカやベトナムなどいろいろな国のお坊さんに会うことがあります。その方々は、戒律を守っておられるので、結婚していません。家庭を離れ、仏道修行に励んでおられます。日本の、浄土真宗のお寺に生まれ育った私には、僧侶が結婚することに特に疑問や関心はありませんでしたが、よくよく考えるとこれは大変なことかもしれませんね。
親鸞聖人のご結婚に関する詳しい記録は残っていません。9歳でお得度をされ、比叡山に入られた親鸞聖人は、20年間そこでご修行をなさいます。20年のご修行中でも仏教徒にとってのゴールである悟りへの道が見えてきません。様々な悩み苦しみを抱えながら、親鸞聖人は京都市中の六角堂を訪ねます。その悩みの中の一つには、結婚や家庭を持つということもあったのかもしれません。六角堂では、救世観音菩薩から夢のお告げを受けます。
「仏道修行をするものは女犯は堅く禁ぜられているが、前からのいろいろな縁によって妻帯をするようなことになった場合は、私(救世観音)が玉のような女の姿になって、つれそってあげよう。そして、一生の間よくおごそかに飾ってあげて、臨終になったら極楽へつれて行ってあげよう。」(御伝鈔上巻第三段)
この夢のお告げが一つのきっかけとなり、比叡山を離れ、法然聖人の元へ行き、今度はそこで仏法を学び始めます。法然聖人の教えは、老若男女、出家在家を問わず、阿弥陀仏の教えを聞き、南無阿弥陀仏のお念仏を称えて、お浄土に生まれさせていただき、そこで、悟りを開くという教えです。その法然聖人のお言葉を一つご紹介します。
「現世をすぐべき様は、念仏の申されんようにすぐべし。念仏のさまたげになりぬべくは、なになりともよろづをすてて、これをとどむべし。いはく。ひじりで申されずば、妻をもうけて申すべし。妻をもうけてもうされずば、ひじりにて申すべし。」
法然聖人は、念仏を生活の軸としなさい。戒律を守った生活をした方が念仏しやすいのであれば、そうすればいいし、妻や家庭を持った方が念仏をしやすいのであれば、そうしたらいいとおしゃっています。出家か在家かというところが問題になってくるのではなく、どのような生活スタイルであっても、南無阿弥陀仏のお念仏を中心とした生活を送ることが、阿弥陀仏の浄土への道であり、悟りへの道であることを教えてくださっています。
法然聖人の教えを受けた親鸞聖人は、いつの頃か恵信尼さまとご結婚されました。お二人は、お子様方とともに、お念仏に満ちた人生を歩まれました。当時、悟りへの道は出家者中心に開かれていました。在家の者にとって、仏教とは、自分とはかけ離れた存在だったことでしょう。そのような中、親鸞聖人は、在家の者、家族持ちの者にも仏道を歩むことができるということを、ご自身の生き様を通して示してくださいました。私たちのような戒律を持たない仏教徒にとって親鸞聖人と恵信尼様の生き方は、一つの目指すべき姿です。もし親鸞聖人がご結婚されなかったら、今も、在家の者の悟りへの道は開けていなかったかもしれません。ですので、浄土真宗の結婚とは、親鸞聖人と恵信尼様が歩まれたように、夫婦でお念仏のお悟りへの道を歩む門出といえるでしょう。
私事ですが、妻と結婚して15年くらいたちました。今8歳になる長男も生まれてきてくれました。妻には法話の内容や英語の発音、僧侶としての言動にちょこちょこ助言を言われ、イラっとすることもありますが、そのおかげで僧侶として成長させてもらいました。おかげでこの15年、ぶつぶつ文句を言い合いながらも楽しく開教使生活をやってこれました。そう思うと、私にとって結婚は、お念仏の道を歩むよい機縁となってくださっていたのだと感謝あるのみです。

合掌


浄土真宗本願寺派
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